初心者への洋書案内② 読みやすい洋書3条件 挫折しやすい洋書3つの罠

初心者のための洋書案内:読み方のコツ

こんにちは。会議通訳のあひるです。

前回は読むことの大切さをお話ししました。しかしいわゆる英語テキストを超えて新聞や洋書を読もうとすると,一気にハードルが上がりますよね。そこで今回は,いかにご自身に読みやすい本を選ぶかについてお話します。

読みやすい洋書 3つの条件

洋書を楽しむコツは,ひとえに自分にとって読みやすいものを選ぶことです。では,この『読みやすいもの』ってどんなものでしょう?私は慣れない方に聞かれると,以下のポイントをおすすめしています。

【1】内容に興味があって楽しく読めるもの

読みやすいかどうかは背景知識があるかないかがとても大きいです。『オススメされていたから』『この本は読みやすいと聞いたから』という理由ではなく,ぜひご自身の興味のあるものを選んでください。少なくとも日本語でも読みたいものでないと,英語で読み進めるのは大変な苦痛です。

【2】短めの章立てで,各章が独立しているもの

これは少しくらいわからないところがあっても後半に響かないためです。もし難しすぎるところがあればわかるところだけ/わかるところから読む,ということもできるのが嬉しい。

ちなみにやはり自分が興味があって知っている分野のものは背景知識が手伝って読みやすいので,自分が読みやすい,わかるところ=自分にとって面白いところ,となることが多い気がします。

【3】出来ればあまり表現が凝りすぎていないもの

以上の3点になるのですが,これを満たしていて比較的どなたにもおすすめしやすいのが,広く一般向けに書かれたビジネス書,それからご自身の専門の分野です。その理由をお伝えするために,逆にどんなものが挫折しやすいかを少し見ていきましょう。

挫折しやすい洋書 3つの罠

そう,読むことは大事,英語力向上に大変有効です。そのため様々な場面で読書の効用は説かれます。初めての洋書案内,初心者に読みやすいもの,云々。しかしここで声を最大にして言わせてください。何より自分が読みたいもの,興味があるものを選んでください。少なくとも『日本語であっても読むもの』です。お勉強のために選んだ日本語だったら読まないものは除外します。これが唯一にして最大の継続の秘訣です。

私も海外経験もなく社会人になってから英語を勉強してきたので,勉強法自体もいろいろ試しました。その中で多読の重要性は理解しつつ,どうしても続かなかったんです。でも今ならその理由がよくわかります。単に読めない本を読んでいたから。

多読を勧める文脈で,ごく個人的には『初心者でも読みやすい』と言われるものに3つの罠を感じました。【1】子ども向け絵本の罠,【2】読みやすいお話の罠,そして【3】Grated Readersの罠。どんな本でもそうですが,好きな人には好適です。しかしそもそも,興味がなくても万人が読みやすい本などありません。内容に興味があれば読みやすいし,内容に興味がなければ読みにくい。馴染みのある分野であれば読みやすいし,馴染みのない分野のものは読みにくいのです。

【1】子ども向け絵本の罠

子ども向けの絵本,よく勧められます。好きな方には好適ですが,特に興味がないと大変に難しいです。

まずボキャブラリーが想像を超えてきます。絵本ではお馴染みのお花や葉っぱ,動物。地域のものですから日本では一般的でないもの,日本に存在しないものも多々あります。年齢が上がってくると架空の生き物など出始めます。海外経験のない私には想像もつきませんでした。

さらに,先が読めません。たとえば,不思議の国のアリス。ディズニー公式『チェシャ猫』紹介を見てみましょう。

顔の部分を分解させたり,しま模様を動かしたりできます。ふいに現れたり,ニヤニヤ笑いだけを残して消えたりを繰り返し,アリスの頭を混乱させます。

これ英語で読んで追えますか?こちらの頭も混乱して終わるのではないでしょうか。

そして最大の理由。ビジネスパーソンの場合,これだけ苦労して読み解いても学んだ表現を仕事に活かせません。

夫がカナダの出身なので,子どもたちに母国語を読み聞かせようと,よく図書館で英語の絵本を借りてきています。私も時々見せてもらうのですが,やはり難しいですね。会議通訳になった今,さすがに私も一般的なビジネス書は英語で読みますが絵本は未だ鬼門です。

【2】『読みやすい』お話の罠

これもよく,多読を勧める文脈で出てきます。心温まる物語,有名映画の原作,ミステリーなどです。これも好きな方には好適ですが,特に興味がなければ必ずしも読みやすい訳ではありません。

大好きでストーリーを覚えてしまったような映画の原作,これはかなりオススメです。間違いなくハマれるからです。しかしごく一般的な話をすれば,まず,フィクション,物語というのは表現が凝っていて難しいです。琴線に触れる美しい表現。フィクションとはそういうものだからです。

そして映画の原作も,初めから映画化ありきで作られたとは限りません。ベストセラーになって映画化されたケースも多いです。その場合,大変に凝った長い物語をわかりやすく再編成して映画にします。結果,映画本体より原作の方が難しいこともあります。確かに映画化されるのは人気作なのですが,特にその映画が好きではない場合,他のベストセラーと効用はそう変わりません。

それから,何故か大衆むけのミステリー小説もよく紹介されます。アガサクリスティとかシドニーシェルダンとか。確かにクリスティという人は人生のあり方というものをよく知っていますよね,素晴らしい作家で私も好きです。しかし『初めて洋書を読む人』の第一選択肢となるかと聞かれると私には疑問です。

まず,長い。冒頭お話したように,英語を読み慣れていない人にオススメなのは短めの章立てで各章が独立しているものです。少しくらいわからないところがあっても次の章に響かないからです。よく『わからない単語があっても推測して読み進めましょう』などと言われますが,それができるかどうかなんてひとえに本の構成次第ではないでしょうか。

ミステリというのは,冒頭の細かい伏線が後々犯人探しに効いてきたりします。それを『わからないものを推測して次』に行ってもやっぱり結局よくわからないのではないでしょうか。

余談ですが一度,(散々挫折を繰り返した末に)なぜこのような本ばかり紹介されるのかを真剣に考えてみたことがあります。思うのですが,いわゆる英語教育の専門家として多読の本などを執筆されるのは大学の先生や研究者,たとえば本来のご専門はシェイクスピアやディッケンズ,そのような方が多いのではないでしょうか。そう考えると比較的親しみやすい映画の原作や大衆むけミステリを勧められるのは大変よく理解できます。

しかし,こちらはそんなレベルには遥か届かない超えた初心者。あくまで英語というのは手段であって目的ではありませんから,本を選ぶにもご自身にとって面白く,ご自身にとってわかりやすいもの,これが最優先です。

【3】Grated Readersの罠

Grated Readers, ご存じですか?英語学習者に向けに,レベル別に読みやすい英語で書かれたシリーズです。Oxford Grated Readers, Penguin Readersなどいくつかの出版社から出ています。

このGrated Readersシリーズ,読みたい本が出ていればかなりよいです。書き下ろし作品もありますが,ベストセラーをやさしい英語に再編集してくれているものもあります。たとえばベストセラーになった,あの(分厚い)スティーブ・ジョブズの伝記。あれを軽くシンプルな英語で読めるのはとてもいいですよね。ただし罠なのは,Greated Readersであれば必ずしも読みやすい訳ではない点です。

ここではOxford Bookworms Libraryの レベル表を見てみましょう。
最終段階のStage6はCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠) C1, 英検1級レベルです。

CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠) C1
引用元:British Council,

熟達した言語使用者
いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また 学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について 明確で、しっかりとした構成の詳細な文章を作ることができる。 

これ相当レベル高いというか,高度に専門的でなければ(Grated Readersではない)普通の洋書が充分読めるレベルですよね。実際どんなものが出ているのか,ラインナップをみてみましょう。Stage6は高慢と偏見,ジェーンエア,オリバーツイストなどが並んでいます。

そう,このGrated Readers,Stage 3,4くらいまでは確かにやさしいのですが,後半は『元々(おそらく英語話者にも)ものすごいハードルの高いものを普通の英語でも読めるレベルに再編集されている』ものです。一般的な内容なら英語で充分読める層が対象です。本当に高慢と偏見を英語で読みたい方にはとてもよいのですが,このGrated Readersだからやさしいとは限らない,という点は注意が必要です。

実際,このシリーズは本当に読みやすくて面白い本もたくさんあります。私もいろいろ読んできましたので,オススメは後日まとめて紹介します。

初心者へのおすすめはシンプルなビジネス書かご自身の専門

いろいろお話してきましたが,じゃあ結局どんなものがいいの?これを満たしながらおすすめしたいのが,上に申し上げたとおり広く一般向けに書かれたビジネス書です。自己啓発書にも分類されるかもしれません。

『伝わるコミュニケーション術』,『成功する人の考え方』,『時間術』,『習慣化』云々,とにかくメッセージがシンプルで大衆向けに万人にわかりやすく書かれていることがポイントです。さらに章ごとに内容が独立しているものが多い。これは小説の類と大きく異なる重要なポイントです。そして時々明日から使える発見があったりするのでモチベーションもわく。こういったビジネス書では一般的な洋書でも意外と読みやすいものがあります。

その中でいわゆる『ビジネス書』に分類されるものでも回想録や伝記など,少々凝った表現になりがちなものはとりあえず先ほどのGrated Readersを探してみる,というのもオススメです。

そして次にオススメなのは,ご自身の専門。知っている内容を英語で読むと内容をしっかり把握できるのはもちろんですが,日々使っている=明日からすぐ使える表現に多く出会えることも大変オススメです。たとえば学生さんであればご自身の専門,ビジネスパーソンであればご自身の仕事の内容などです

学生さんであれば,ぜひゼミの先生に聞いてみましょう。日々勉強している内容を英語で読める入門書はないか。理系でしたら分野の研究論文もオススメです。研究論文はまずはじめに要旨があり,全体像を把握した上で本文に入れ,凝った文学表現など全くないのにその研究に必要な表現は全て網羅されています。大変素晴らしい素材です。

ビジネスパーソンの場合もご自身のご専門分野はおすすめです。専門分野なら少々知らない表現も英語から学べる点も有用です。たとえばIT業界がご専門なら,たとえそれまで知らなくてもcloud computingとあれば『クラウドコンピューティングってこう書くのか!』とわかるでしょうし,data processingとあれば『データ処理ってこういうのか!』とわかるのではないでしょうか。

如何でしょうか。ぜひご自身に会う一冊が見つかりますように。一緒に頑張りましょう,Bon Voyage!