苦手な英語で表現するために一番大切なこと

英語に自信を持てないあなたへ

こんにちは。会議通訳のあひるです。前回,初学者こそアウトプットありきで練習することをお勧めしました。

今回は,実際に英語にしていく際に大切なことをお話します。私自身,海外経験もないまま社会人になってから英語を勉強して会議通訳になりましたが,あらゆることを試しながら試行錯誤した結論です。

結論から。重要なのは今考えていることをそのまま英語にしようと考えるのではなく,まずは日本語で,自分の言いたいことをシンプルにする,このステップが何よりも大切です。これは初学者に向かって『英語は英語で考えよう』などというような訳のわからない話とは全く違います。

いつも考えているあれこれを英語にするには

仮に今のあなたの英語力が,日本語の4割程度だったとします。英語を勉強しようとする時,おそらくあなたはこのように↓,ご自身の英語力を日本語並に引き上げようと考えるのではないでしょうか。

これ↑が出来れば理想ですが,とんでもなく時間がかかる上にほぼ間違いなく白馬の王子を追う羽目になります(詳細は過去記事があります)。

最速で英語運用能力を身につけるために必要なのはこの↓ステップです。

それにより,

①自分の英語力で言いたいことが言えるようになる

だけでなく,

極めてわかりやすい日本語を話せるようになる

効果があり,これは単なる英語力云々を超えた本質的なコミュニケーション能力,日本語の話し方をも大きく底上げします,本当に。それでは,具体的に考えていきましょう。

実践!こんな時は英語で何て言う?

そのまま訳してもうまくいかない場合

私事で恐縮ですが先日息子が人参を残そうとしていまして,私は『野菜食わんとかありえないんだよ💢』と少々暴れたことがありました。さて,この『野菜食わんとかありえない』,英語では何と言うでしょう。

『ありえない』,これをそのまま英語にしようとするとまず思いつくのは Impossible (ありえない,不可能な,起こりえない)あたりでしょうが,息子は実際に人参を残そうとしていた訳ですから,これは文字どおりの『ありえない』,『起こりえない』ではないはずです。ではこの『ありえない』,具体的にはどういうことなのでしょうか。

なにかを英語にしたい時はまず,『自分がいつも日本語で(適当に)言っている〇〇〇って,どういうことなんだろう?』としっかりと考える習慣をつけてほしいのです。英語力を確かなものにするためには,これがとても大切で大きな一歩になります。

この『ありえない』もまずは得意の日本語で整理してみましょう。この文脈での『ありえない』,意図としては野菜を食べないことは『受け入れられない』『許されない』といったところでしょうか。『野菜を食べないことは受け入れられない』であれば,辞書や基本的なインターネットツールの力を借りればどうにか英語にできるのではないでしょうか。『受け入れる』を英語にするなら,一般的にはacceptあたりでしょうか。

そうです。元の意味をしっかりと英語にするなら,ちょっと大げさですが We don’t accept that you don’t eat vegetables, あたりでしょうか。(もちろん実際にこの状況なら Hey! Eat VEGETABLES!:野菜を食え!で充分ですが,あくまでプロセスをご説明するための例とご理解ください)

成句や慣用表現

さて,成句や慣用表現はどうでしょう。インターネットで検索すれば,もしくは書店に行けば,『英語らしい表現』とか『ネイティブならこう言う!』とか高度で洗練された表現が多数見つかります。でも,こういうものが覚えられないからずっと英語が苦手だったんです。こういうものもそのまま英語にしようとするのではなく,まずは一度日本語で,自分が英語にできるレベルまで徹底的に落とし込んでいきましょう。

母親に厳しく叱られた息子は,背に腹は代えられず人参を食べていました。この『背に腹は代えられない』はどうでしょう。

調べてみるとおそらく,”Desperate times call for desperate measures”だとか,”with the utmost reluctance”だとか,もしくは”you can’t make an omelet without breaking eggs.”だとか色々出てくると思います(適当に検索してみてください)。仰るとおりなのですが,英語を始めたばかりの私がこれをすんなり覚えられたかというと,まず無理です。というより私はこういうものが覚えられないから苦手だったんです。

これも得意の日本語で整理してみましょう。『背に腹は代えられない』って,そもそもどういう意味ですか?

言ってみれば『本当は嫌だけど仕方ない』,といったところでしょうか。英語運用能力というのは試験に出る慣用句を覚えることではありません。少なくとも初学者の最優先事項ではありません。自分の言いたいことをなんとかまともな英語で伝える力ですから,まずは『言いたいこと』自体を日本語でどんどんシンプルにしていきます。

今朝の息子は本来人参なんて食べたくなかった。彼にとってそれは大きな犠牲です。しかし母親はこのまま食べずに許してくれそうにはない,むしろ更なる犠牲が降ってきそう。それよりは人参食べたほうがいいかもしれない,食べるしかない。このように日本語で整理していきます。

今回の『背に腹は代えられず人参を食べた』,言い方は無限にあるでしょうが,とりあえず『嫌だけど人参食べた(I hate carrots, but I ate them)』でもとりあえず言いたいことは伝わるのではないでしょうか。ちょっと構文を駆使して『人参を食べるしかなかった(I had no other choice but to eat carrots)』などとしてみると,いい勉強になるかもしれません。このくらいまで日本語をシンプルにできれば,なんとか英語にしようという気が起きるのではないでしょうか。

如何でしょう。今回は説明のためかなり単純な例でお話しましたが,『まずは考えていることを,英語にしやすいシンプルな日本語にする』というイメージは伝わりましたか?

英語力より真のコミュニケーション能力を

私は英語がとても苦手だったからこそ,試行錯誤の末にこの方法にたどり着きました。当時は普段考えている日本語そのままでは到底英語にできなかったからです。しかしこのスキルが身につくと,自分の思考もクリアになり,日本語もとてもわかりやすくなります。

さらによくわからない日本語を聞いた時も,自然と頭の中で噛み砕ける能力・習慣が身につきます。これは通訳をする上でとても役に立ちますが,しかし通訳でなくとも『わかりやすく話し,相手の話をわかりやすくまとめる』スキルが身につくのは誰にとっても嬉しいのではないでしょうか。このプロセスを身に着けるため,いきなり英語に飛びつく前に,まずは『思考をシンプルにする』練習をしてほしいのです。

よく,『中学英語だけで英会話はできる』といった類の話を聞きませんか?これには完全に同意しつつ,少し言葉を補足させてください。言ってみれば,『自分の考えを中学英語でも表現できるレベルまでシンプルにすることが,英語で話すカギ』となるのです。

これができれば,当然のことながら中学英語で充分言いたいことは伝えられ,さらに,より本質的なメッセージの伝え方,コミュニケーション力が大幅に向上します。このステップが慣れるまでは結構大変なのですが,後々本当に大きな武器になります。私も英語学習を始めた頃は寝ても覚めても日本語ばかり考えていました。

ちなみにこれは完全に個人的な感覚ですが,英語力が今の日本語の4割もあれば,日本語を調整することでそこそこの英語になると思います。2,3割だと少し英語力を底上げしないと難しいかもしれません。

如何でしょう。思考を具体的に英語にしていくプロセス,イメージ湧きましたか?そして簡略化した日本語とはいえ,いざ英語にしようとするとやはり悩むと思うのです。時制は・・・,冠詞は・・・,云々。その,ああでもないこうでもないと英語を考えたり調べたりするプロセスを通じて,あなたの英語力自体も向上していきます。そしてより複雑なことも言えるようになる,この好循環が生まれます。一緒に頑張りましょう,Bon Voyage!