こんにちは。
今日は通訳を名乗ることが恥ずかしい思いなのですが,それもこれも『プラハの古本屋』。
職業として言葉を扱うことに襟を正される思いがする一方,言葉を学ぶとこんな(ディープで)面白い世界があるということを改めて教えてくれる,そんな1冊を読みました。
プラハの古本屋
究極の好きを仕事にした人生
私は通訳をすることで生計を立てているという意味では職業通訳です。そのため言葉のプロとも言えますが,しかし生得的には言葉のプロではないのだなとしみじみ思います。
私は通訳の仕事を通じて見えてくる組織の動き方,そしてその基本となる人間の有り様を見るのが楽しい,つまり興味の対象は人なのだと思います。
対してこの『プラハの古本屋』。本当に純粋な言語としての言葉がお好きなのだろうということがしみじみと伝わります。
もちろんチェコの文化を日本に伝えるのは大切な役目,大切な役職。
しかしそれ以前に,純粋な『好き』からなさっていた研究なのだろうと。
経済が停滞したり社会に余裕がなくなってきたりすると,どうしても短期の効果効率ばかりを追い求める社会になりがち。
しかしこのような長い目で見て人の生きる文化が豊かになるような,そういう生き方がもっともっと評価される社会であってほしいと思いますよね。
私が外国語に惹かれるとき
そんなこんなで,どこまでいっても人にしか興味を持てない私。
なので,このような言葉を学ぶことを通じた面白い人との出会い,新しい経験などについて読んでいると,ついその外国語をやりたくなってしまいます。
しばらくロシア語やりたいと言っていたのですが,それもこれも紳士協定とロシア語だけの青春が面白く,いいなと思っていたところで読んだロシア文学を学びにアメリカへ?が決定打になりました。
フランス語をやりたいともしばらく言っていて,なにせフランス語ですからきっかけとなった本はいろいろあるのですが,中でも惹かれたのが腕一本・巴里の横顔と女ひとりの巴里ぐらしでしょうか。
こんな古き良きパリも,もうなくなってしまいましたね。
日本から言語的・文化的に離れた言語であればあるほど日本では出会えない,日本の感覚ではあっと驚くような出会いがあります。
それはやっぱり言葉を学ぶことでしか得られない。本来外国語の勉強自体は苦手な私ですが,やっぱり言葉にはこういう魔力があるんですよね。
古本屋をめぐる人々
このプラハの古本屋然り。
チェコ語というかスラブ言語全般への興味と探究心が実に様々な出会いを引き寄せるわけですが,中でも秀逸なのが,タイトルどおり古本屋をめぐる人たち。
社会主義国の古本屋という日本とは状況が異なることもあって,一風変わったというか,ちょっと日本の古本屋とは違う種類の交流があって,著者がそれを心から楽しんでいるのが伝わってくる。
最近は自由が声高く叫ばれる非常に不自由な社会だと感じます。
このプラハの古本屋,社会主義という表立った制約があるからこそ人々の交流が暖かくなるのではないか,そんなことを感じます。
ブダペストの古本屋
ちなみに,『プラハの古本屋』の著者が師と仰ぐ方の書いた『ブダペストの古本屋』という書もあります。
プラハの古本屋は本当に言語としての言葉が好きなんだなぁと楽しく読んだのですが,ブダペストの古本屋はまさに昔の知識人,本物の愛書家,文化人の趣を感じます。
スラブ好きが高じて研究の道に進み,こんな師に出会えるってすごいですよね。
その言葉・文化に惹かれて追求していくことで,同じように『好き』を追求する人(ここでは先生ですが)と出会える。どうしたって魅力的です。
小さなバイリンガリストたち
この『プラハの古本屋』には『小さなバイリンガリストたち』という章があり,そこでは著者が2人のお子さんをチェコ・日本のバイリンガルに育てたいきさつが,言語学者ならではの細かな視点で書かれています。
我が家は夫が英語圏出身の国際結婚,いわばバイリンガル環境です。
バイリンガル環境で育つ我が家の2男1女を観察しながら,やはり(いつ始めるかを問わず)語学はある程度のインプットが必要なのでとにかく嫌いにしないことが大事,という記事を以前書いています。
(→AI時代の子どもの英語教育(&バイリンガル環境の我が家の顛末))
ただ英語の場合,日本では熱心に学んでいる人が多いし,なにせ学校でやりますから出来ると褒められたりするのでモチベーションも比較的保ちやすい。
それに対してチェコ語を継続する場合,お父さまやお母さまとの関わり,そして現地チェコで出会った人たちに魅力がないと,やはり継続は難しいと思うのです。
そういった意味で,お子さん方がチェコ語をしっかりマスターされ,さらに他の外国語までそれぞれに学ばれているというのは,本当にいいご両親と現地の出会いがあったのだろうとお察しします。
そんな親でありたいですね。
言葉を学んで得られるもの
私はこのブログで,自分の経験を振り返りながら,これから学ぶ方へ英語の学習などもよく取り上げています。
しかし言語の習得自体は決して目的ではない。
お読みくださるひとりひとりに,こんな素敵な出会いがあったらいいなと思っています。一緒に頑張りましょう,Bon Voyage!



