【海外未経験から通訳まで④】通訳あひるです,と言えるようになるまで

私が通訳になるまで

こんにちは。会議通訳のあひるです。

私は海外経験もなく,社会人になってから英語を勉強して会議通訳になりました。そんな私の学習歴を少し詳しくお話しています。

前回は通訳スクール体験記とそこで私が学んだことをお伝えしました。最終回の今回は,そんな私が胸を張って『通訳のあひるです』と言えるようになるまでです。

ひよっこ通訳修行の日々

第1回でお伝えしたとおり,元々通訳スクールに通い始めたのは英語力を向上させたかったから。

初級から始めて簡単な会話もできるようになった。学習者向けの教材ならだいぶわかるようになった。TOEIC900点も超えた。

同時に停滞感を感じるようになったのもこの頃。

初級の『話せば話すだけ伸びる』時期もすぎ,以前のようには伸びない。もう一歩上級へ行きたい。通訳スクールに行き始めたのはこんなきっかけでした。

通訳を目指すようになったきっかけ

そんな私がなぜ本格的に通訳を始めることになったのか。突き詰めて言えば,通訳スクールに通ったことで魅力的な通訳,通訳を目指す魅力的な方々に会ったから。

当然ながら通訳スクールには現役通訳でスキル向上を目指す方,通訳を目指す方がたくさんいらしています。
ですから通訳業について聞く機会も増えます。

私から見るとものすごく上手な通訳さんが,さらに努力を重ねている。腕一本で生きてる感じがかっこいい。

企業内通訳/フリーランスと働き方もとても自由。しかもライフステージによって選べる。かっこいい。

通訳としての出会いを生かして他の仕事や活動をしつつ,スケジュールに合わせて通訳をされている方もいる。自由でかっこいい。

第1回で触れましたが,そもそも大きな組織に勤めることに疲れ,なにか新しいことを始めたくて英語を始めた私。会社勤めも辞めて有期の仕事をしながら通訳スクールに通い始め,次の仕事はどうしようとぼんやりと考えていた時期でもあります。

そんな私がそんな時期にこんな出会いがあったです。それぞれ前向きに学んでいかれる姿勢はとても魅力的でした。

そんな出会いを通じて,一度は通訳という仕事もやってみようと思うようになります。

未経験からの仕事探し

とはいえ通訳としては完全に未経験の私。スキルもない上に未経験者の仕事探しはとても難しい。

通訳スクールに通い始める頃には、『仕事で英語を使う』ということはしていました。外資系の企業では英語『で』仕事をしていましたが,通訳につながりそうな経験といえば英文事務や簡単な翻訳,コミュニケーションサポートくらい。

それでも結局は市場で今の自分が貢献できることを探していくしかないんです。

業務知識・業務経験は通訳として最大の強み。
これまでの経験やご縁を元に,まずは自分がよく知っている業界・業種で3ヶ月,6ヶ月といった短期のお仕事から始めます。

ひよっこ通訳が今できること

新卒では元々エンジニアの仕事をしていた私。この業界では結構短期のスポット的な通訳募集もあります。

業務内容や業界知識を学ぶのは,通訳として重要な関門。そのため短期のポジションでは,如何に早く知識を得てキャッチアップしていくかが大きなカギとなります。

そんなポジションでは,やはり業界経験がとても強いのです。

通訳の難しさはやはり『人の言葉を訳すこと』。
自分の想いであれば,純粋な英語力があれば英語で話せます。しかし通訳としては自分が詳しくない,知らない内容でも訳さないといけません。

その点自分が経験してきた業界なら,業務内容自体はまぁわかる。そういう場所なら,ある意味『英語で仕事をする』のと同じように通訳できるのではないか。

そんなことを考え,(通訳経験はないものの)エンジニア職など自分自身の実務経験をうまく生かしながら,短期のポジションの通訳経験を重ねていきます。

そんなご縁が重なって,初めて企業の社内通訳としてフルタイムで同時通訳のお仕事を始めたのは,通訳スクールの基礎コースに入学してから3年めのことでした。

(正確には通訳機材を利用するウィスパリング通訳と呼ばれるものです)

ひよっこ通訳の洗礼

そんなこんなで専任通訳になった私。

元々エンジニアの仕事をしていた私の初・通訳ポジションはIT業。まさに自分がやっていたような仕事の現場です。

もちろん業務内容はほとんど自分自身が経験していたことは大きなメリットでした。それでもやはり,付け焼き刃の英語力と未経験の通訳業。当たり前ですが,現場は大変。

それまで『お勉強』モードで通訳スクールに通っていた私は,いかに知識をつけるか,スキルを上げるかが重要なテーマでした。しかし逆に言えば,それ以外の側面はまったく考えていなかったんです。

突然降って湧いてくる通訳依頼に日々どう対応していくか。『通訳未経験』ということは,スキル以前にこの業界での仕事の仕方も未経験。

日々スキル向上に努めながら仕事の仕方自体もひとつひとつ学んでいく,文字どおりのひよっこ修行が始まります。

具体的な例をひとつ。これは私自身も通訳の現場に入って初めて思い至ったのですが,私はそもそも1日中声を出していること自体が初めて。

そもそも基本的な英語自体,訓練中の私。発声にも無理があったのでしょう。初めてフルタイムの同時通訳ポジションについて3週目,4週目,5週目と3週連続で喉を痛め,扁桃腺を腫らして高熱を出しました。洗礼というやつですね。

通訳あひるです,と言えない私

そんなこんなで通訳経験を重ねていきます。

初めの会社さんは1年強で卒業し,次は別の会社さんで2年半ほどフルタイムの企業内通訳としてお世話になりました。そしてその後また別の会社さんで,と,着々と積み上がるキャリア。

この頃には以前お世話になった会社さんから会議通訳の案件をお声がけを頂いたりします。

まるでそこそこの経験を実績を持った通訳みたい。でも,何年経っても正々堂々と『通訳のあひるです』とは言えない。自信がないんです。

会議で通訳をすれば特に文句も言われないし,次も呼んでくださる。でもそれは単に自分がやっていたから。それは実質英語で仕事をしてるのと同じで,どんな話題も訳せる『通訳』なんてまだまだ。

当時の気分を文字にするとこんな感じでしょうか。自信がなく,何年経っても『通訳さん』と言われることに違和感が拭えません。

通訳あひるです,と言えるようになるまで

こんな私もいつしか,ごく自然に『本日の通訳あひるです,よろしくお願い致します』と言えるようになります。

どうやってこの違和感をなくしたか。結局きっかけは英語信仰の罠を抜け出し,英語の発話をフラットに聞けるようになった時でした。

世にも恐ろしい英語信仰の罠

ずっと海外未経験,英語が嫌いだった私。今振り返ると,なんとなく心の奥底に『英語話してる人みんなすごい』みたいな無意識の思い込みがあった気がします。

当然ですが母語が日本語であっても英語であってもいろんな人がいます。ごもっともなことを仰る人も意味わからないことばかり言っている人も。

しかしなんとなく『英語を話している人はすごい』みたいな思い込みがあると,変なことを言われた時に咄嗟に自分が間違えたと思うんです。あぁ,また聞き取れなかった,と。

そうするとどんどん話は噛み合わなくなってきます。この英語信仰の罠,知らないうちに私もしっかりハマっていたのだと思います。

罠を抜け出す

どうしたら抜け出せるか。身も蓋もないのですが,結局スキルと経験を積んでいくしかないんです。

始めは実務経験のある分野しか通訳できなかった私も,何年もやっていれば色々な機会も頂きます。午前中に金融機関,昼休み明けに製薬会社に伺って夕方に製造業といった,昔なら考えられなかった働き方もするようになります。同時に英語力の研鑽にも常に励んできたつもりです。

そうすると当然ながら色々な方に会い,色々な考え方に触れ,色々な場面(修羅場?)にも遭遇します。

そして基盤の英語力も上がっていきますから,ひとつひとつを深く理解できるようになります。そうすると次第に,みんな自分の予想なんて遥か超えたことを仰るという,至極当然のことが身体で理解できます。

そう,結局自分自身の心構えと自信の問題だったんです。そしてその壁を超えたのは経験。

当たり前だろうと思われるかもしれません。それでも英語信仰の罠から抜け出せたのは,まさに目から鱗の原体験だったりします。

通訳あひるです,今後ともよろしくお願いします

結局この罠を抜け出して発話をフラットに聞けるようになると,自分の思い込みから解放されるんです。

思い込みを解放できると,同じ会議に通訳として同席していても,いろいろなことが見えてきます。一気に解像度が上がるんです。

そうすると逆に,自分自身のこともよく見えてきます。

自分が出来ることと出来ないこと,向いていることと向いていないこともわかってきた。人の立場が見えるようになってきた。

これがそのまま自信になります。

通訳としてはいろんな働き方があるけど,企業内通訳でもフリーランスでも,身の程さえ弁えればなんとかやっていける気がしてきた。

私がこのように思えたのは,初めて初級の英語コースに入って10年,通訳スクールの基礎クラスを始めて7年,通訳専任ポジションについて約5年ほどのことでした。

**********

ここまで,如何でしたか?
これはあくまで,ごくごく個人的な体験談です。今は学習環境もいろいろと変わっています。

それでもここまで振り返ると,やはりコミュニケーションツールとしての言葉を学ぶということの本質って,そんなに変わらないような気もします。

長々と書いてしまった私の学習歴も,今回で終わり。これから始める方に少しでも参考になったら嬉しいです。一緒に頑張りましょう,。Bon Voyage!

2026年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

アーカイブ

カテゴリー

タイトルとURLをコピーしました